セルマーの新機種「Supreme」を試奏した感想!正真正銘の「頂点」を感じた瞬間

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欲しい欲が止まらない….!

H.SELMER “SUPREME” をついに試奏、なんという艶のある音色だろうか…..

この時を待っていました。2021年2月25日、彗星のように登場してきたセルマーの「Supreme」をついに試奏する機会を得ました。

「Supreme」が発表される前の新製品発表がテナーサックスの「Axos」シリーズで、ボクが利用しているSNSの方々はヽ(・ω・)/ズコーとなっていたのが記憶に新しいですが、今回まさかフラッグシップモデルが投入してくるか、と興奮を覚えました。

また、フラッグシップモデルの名前も前例に沿って「Serie4」になると勝手に考えていたものですから、「Supreme」が発表されたとき、これはセルマー社の製品群の中でどこに位置するのか、最初は分からずに困惑したのが正直なところ。

実際に試奏してみたいとは思っていましたが、なかなかその機会に恵まれることはありませんでした。

というのもこの「Supreme」、相当な人気があったようで、懇意にしている楽器屋さんでも第1出荷分のSupremeはすぐに売れてしまったとのこと。今回は第2出荷分の「Supreme」が入荷したとのことで、早速お邪魔させていただきました。

「Supreme」についてのおさらい

ボクはこの機種が出て以降情報を積極的に得ようとしていたのですが、どこも通り一遍の「記述できる」説明しかなく、やはり吹いてみなければ、と感じた次第。

その前に改善点を確認すべく、Supremeは以前のシリーズ2,3とどう違うのか、改めておさらいしていきたいと思います。

Supremeについて、野中貿易の公式ホームページには、このように書かれています。

「Supreme」は音楽のジャンルの境界を越えていく楽器であり、Balanced Actionの「美の追求」、Mark Ⅵの「伝説的なしなやかさ」、SerieⅡの「扱いやすさ」、SerieⅢの「緻密さと優美さ」、Referenceの「力強さと素直さ」、これらすべてに通じる品質を実現しています。

またSupremeの特徴として、新設計のネック、ネック結合部分の新システム、C#補正システム、キーのコンパクト化が挙げられます。特にC#補正システムに関しては登場以降も賛否両論あったため、試奏の際にも気になっていたポイントです。

「Supreme」の価格は、「ダークゴールドラッカー」と呼ばれるラッカーが施されている通常モデルが、税込825,000円。シリーズ3と比べて、約10万円ほど高価になっています。

シリーズ2とシリーズ3の間には同じく10万円程度の価格差がありますが、今回も順当にその法則に乗っかっている形ともいえそうです。

とはいえ、825,000円は気軽に出せる金額ではありません。それを裏付けるかの如く、楽器屋さんに聞いたところ、Supremeが元から高いため、それぐらいであればもう少し上乗せしてシリーズ2,3のGPを買うというお客様もいるとのこと。

ボクも825,000円をポンと出せる立場なら、「待てよ..?それならもうちょっと上乗せして他の楽器のゴールドプレートを買った方がいいんじゃないか..?」と考えてしまいそうです。

今回は値段が高いこともあってか、付属のマウスピースがSelmer Conceptが付属することになっています。普通のS80、S90よりも高いマウスピースですので、ここは少し買い得感を感じるポイントかもしれません。(とはいえ、どうせマウスピースは選定して買うのであまり意味はないと思う)

また、今回はケースやスワブ、ネックストラップも元から付属しています。Selmerのネックにある「S」マークの紺色を彷彿とさせる紺色で統一されており、非常にスタイリッシュに仕上がっているように感じます。

今回楽器の彫刻のモチーフになっているのは、「植物や金属分子のイメージを混合したデザインであり、背景の円は惑星・宇宙空間をイメージ」しているとのことですが、これらのデザインがスワブやクロスにも反映されています。

ボクは青好きなので、このケースやスワブを見ただけでも欲しくなってしまったというのが正直なところ。これを背負って街中をドヤ顔で歩いてみたいものです。

ついにご対面!単純なゴールドラッカーより色が深く、GPに見えないこともない

思わずおぉ…とため息が漏れてしまいそうなほど美しい管体。サムレスト・サムフックも金属製になっているので、全体として非常に引き締まった印象を受けます。

「ダークゴールドラッカー」と称されているラッカーは、ボクのヤマハカスタムのゴールドラッカーと比較してもかなり色が深く、GPと見まがうほどの色合いでした。他楽器に例えるならば、Referenceのアンティークゴールドラッカーに似ているという印象を受けました。

彫刻はレーザー彫刻と手彫りのハイブリッド彫刻であり、付近を触るとざらざらとしたサテン調の触感を覚えます。正直、「植物や金属の分子がモチーフ」と言われてもピンときませんが、カッコいい彫刻であるというのは間違いありません。

まだ誰の指紋もついていない綺麗な管体を、こんなド素人(ようやくサックスを始めて1年になった)が触っていいのか、と葛藤もありましたが、えーいと触ってしまうことに。

艶めかしい管体を眺めまわしながら、ストラップに装着。重さはまったく感じず、普段のヤマハカスタムと似たバランスでした。

いよいよマウスピースを装着し、試奏に移ります。

ボクはクラシックサックスが好きなのですが、部活動の関係でジャズを触ることも多いため、今回は2ジャンルのセッティングで試してみたいと思います。ジャンルの境界を超えるといった記述もあったので、ここはどうなるか楽しみなところです。

いざ試奏!なんだこの音色は….

普段のボクのセッティング

YAMAHA YAS-875EXⅡ GPネック パームキーコルク盛り Yany BooStar✧ PGP

Classic… Selmer S90 170 / BG L10 / バンドレン青箱3 1/2

Jazz… Mayer 5MM / Selmer Metal Jazz C☆☆ /純正リガチャーx2 / レジェール アメリカンカット 2.50

まずはクラシックセッティングから。とても重厚感があり、濃密な音色がします。やや暗めといったところ。

シリーズ3は吹奏感も軽く、とても華やかなイメージですが、それとは別の路線といった感じがします。シリーズ2の音をもっと濃密に、かつ少し明るめにした感じというのがボクの感想です。(いずれもJubilee比較)

普段のカスタムと吹き比べると、音の立ち上がりがとてもレスポンシブで、吹いていて楽しい楽器でした。一方、pやppなどは慣れないとすぐには吹きこなせないかな、といった印象。

どの音域においても出しやすく、最高音域もそのまま問題なく演奏することができます。

強く息を入れて何も考えずに吹いても音が非常にまとまり、かつ「求めるいい音」がお手軽に鳴るといった感じ。誰が吹いても良い楽器だな、と思わせることができそう。

また、音程はセルマーとは思えない程安定しています。シリーズ2はかなり奏者のプレイスキルが必要になりますが、Supremeは何もしなくても音程が勝手に合います。ヤマハは音程が良いといわれていますが、そのヤマハカスタムよりも音程はまとまる印象です。

件のC#のキーですが、これは個人的にはイマイチなポイント。開放C#が替え指のような抵抗感を持っており、音もどこか抜けが悪い感じがします。良く言えば替え指の必要はなくなりましたが、その分奏者のこだわりを反映させることが難しくなっているように思います。

また、キーが以前のモデルと比べてコンパクト化されたと書かれていましたが、普段からキー配置がコンパクトなヤマハカスタムを使っているボクにはあまり恩恵がありませんでした。普段のカスタムと比べるとキー配置に違和感があり、ヤマハからの持ち替えには少し時間を要しそうです。

特にパームキーが小型化されており、手の小さい中高生などには良いのかもしれません。ボクは手が平均よりは大きい人間なので、少し扱いづらさを感じました。ボクが買ったらまたコルクを盛るはめになりそうです。(ラッカーが剥げるのでなるべくしたくない)

彫刻があまりにも美しく、惚れ惚れしてしまう。

続いてジャズセッティング。マウスピースを2本用意し、それぞれ吹き比べましたが、共通するところとしてはやはり音がまとまります。そして、柔らかい音色を出すのがとても楽でした。

メイヤー、セルマー共に、ヤマハカスタムで吹くとかなりパワーのあるサウンドになってしまい、弱音域のコントロールが大変なのですが、このSupremeではかなり扱いやすく、「いなされている」印象。

しかし、ガツガツ吹いていきたいときも持ち味のレスポンシブな特性が遺憾なく発揮され、楽器を吹くのが楽しくなるような感触でした。

低音からフラジオ音域まで、暖かみのある音色が出せるため、これでバラードなどを吹いたら楽しいだろうな、と感じました。これは確かに欲しくなります。

ネックソケットの位置が変えられる機構が備わっていますが、これに関してはあまり恩恵を受けることはありませんでした。通常位置でネックを留めるのが一番音がまとまり、他の部位では若干ノイジーだったりハスキーだったり、そのような音色がなりました。

サブトーンマシマシで演奏するのであれば面白いかもしれませんが、通常の演奏においては使う機会はないだろうと感じました。(J-POPなどで使用するのであれば、しっとりと歌いたいシーンにおいて、ネックの位置だけ瞬間的にズラすなどして運用すると面白いかもしれない)

吹いてみた感想まとめ。ボクはいずれこれを買うと思う

音色の音の濃密さは間違いなくセルマーの楽器でしたが、順当なシリーズ2、3の進化かと言われると微妙であると返答せざるを得ません。Supremeは完全に新機種であり、これからのスタンダードを引っ張っていく存在であると感じます。

また、吹奏感も今までのセルマーとは違う印象です。今までセルマーはシリーズ2,3のJubileeをそれぞれ触らせていただく機会があったのですが、シリーズ2は結構重く、しかし音は詰まり気味な印象。ボクのヤマハカスタムと非常に似ていると感じ、シリーズ3はかなり軽く、音が開ききっているといった印象でした。

しかしこれはどのシリーズにも属しておらず、強いて言えばヤナギサワのWO37の吹奏感をもう少しライトにした感じ、というのがベストでしょう。

WO37はかなりヘビーなのですが、音の立ち上がりなどは非常に似た特性を持っていたように感じました。演奏の幅が広がるダイナミクスを有しているので、奏者の色を出しやすい機種であるといえそうです。

逆にここまで「優等生」な楽器をセルマーが出してくるとは思っていなかったので面を食らった感じになりました。逆にこれを吹いて上手くないと非常に恥ずかしい思いをするな、と感じ、ボクはしばらく今のヤマハカスタムで基礎の実力を向上させていきたいと考えています。

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